米作り詳細
米作りは楽だと言われることがあります。
そう言われる所以は、米の「特徴」にあるのかもしれません。
米は少々のことではへこたれません。
例えば、肥料を全く与えなくてもほどほどに育ちます。
また、野菜のように直接手入れをすることもあまりありません。
つまり、そこまで手をかけなくても育つ作物なので「米作りは楽」なのだと思います。
しかし、米の能力をしっかりと引き出し、収量を確保したり品質をよくするためには、複雑に絡み合った条件を考慮に入れながら手を入れてやる必要があります。
また、米は広い面積で栽培されるため、田の維持管理に大きな労力を費やします。
楽だけど楽ではない米作り
それを細かく分析し、米作りに生かしていきたいと思っています。
塩水選
塩水選とは、よい種籾と悪い種籾を選別する方法です。
その名のとおり、「塩水」を利用して選別します。
よい種籾は、中身(胚乳)が大きく、充実しているため、悪い種籾より重い(密度が大きい)ため、この違いを利用して選別をします。
我が家では、密度1.13g/㎤ の食塩水を作り、その中に種籾を漬け、沈んだもののみ使用します。
密度1.13g/㎤ の食塩水は、新鮮な卵を利用します。
卵が横を向いて水面に浮く時の食塩水の密度が、1.13g/㎤ です。
なぜ1.13g/㎤ なのか?
それは「発芽率」と「病害」が深く関係しています。
一つ目の理由は、発芽率が高い籾を確保するためです。
1.13g/㎤で塩水選を行うと、十分な発芽率になることがデータで示されています。
二つ目の理由は、病害に侵された籾を除去するためです。
ここでの病害はカビと細菌によるものです。
病害菌が生息している部位は、籾表面が量、種類ともに最も多くなっています。
比率は低いですが、籾の内部にまで侵入している場合もあります。
この塩水選では、内部に侵入している病害の除去に大きく役立っています。
つまり、高い発芽率を確保し、病害の検出率が低くなり、種籾のロスが少なくなるような値が1.13g/㎤ということです。
種子消毒
籾表面に付着している病害虫を防除するため、消毒を行います。
消毒の方法は、農薬が主流です。
農薬に漬けたのち、乾かして籾に農薬を付着させることで防除効果を高めます。
我が家で使用している農薬で防除効果がある病害虫は7種類です。
①いもち病
②ばか苗病
③もみ枯細菌病
④苗立枯細菌病
⑤ごま葉枯病
⑥褐条病
⑦イネシンガレセンチュウ
農薬以外の方法で、湯で消毒する「温湯消毒法」というのがあります。
この方法で防除できる病害虫は、上の①、③、④、⑦と言われています。
熱で殺菌する場合、温度と時間によって殺菌効果の大小が決定されます。
温湯消毒法では、60℃で10分間、または58℃で15分間漬ける必要があり、温度が高すぎると発芽率が低下し、温度が低すぎると十分な防除効果が得られなくなります。
つまり、その温度を十分に維持できる環境を整えてやる必要があります。
農薬は適正な濃度、適正な使用方法で使えば、リスクの小さいものだと考えていますが、コスト面や消費者の心理的な側面を考慮に入れると、やはり減らしていくべきだと思っています。
温湯消毒法は、食酢を併用し、温湯だけでは殺菌できない病害に対処する方法も実用化されており、とても興味深い方法です。
しかし、この方法については、もっと詳しく調べる必要があります。
浸種
籾を水に漬ける作業の事を浸種といいます。
これは、籾から発芽させるために行う作業の一つです。
発芽に必要な条件は、「水分」と「温度」です。
水分については一般に、籾の水分が約15%になると発芽の準備に入り、約25%で発芽すると言われています。
そのため浸種では、籾水分25%を目指して行います。
では、どうやって籾水分25%を得ることが出来るのでしょうか?
これには「積算温度」を使います。
積算温度とは温度×日数で表されるもので、これが100℃でほぼ25%の水分が確保されます。
つまり水温が10℃なら、10日浸種し、15℃なら7日くらいです。
この温度は10℃以下だと、その後の生育が少し抑えられることがあり、
20℃以上だと、発芽にバラツキが出たり、ばか苗病などの発生率が高くなります。
浸種中は、籾の吸水程度を均一に保つため、上下を入れ換えます。
浸種することで、「発芽までもう一息!」というところまでもっていき、次に行う操作で一斉に発芽させます。
催芽
続いて、催芽と呼ばれる作業を行います。
約30℃のお湯に漬けることで、出芽を促してやります。
約2mmほど芽が出た「はと胸」と呼ばれる状態になったら、お湯からあげて自然乾燥させます。
芽を出しすぎると、種まきをする際に傷つけてしまう可能性があるため、出しすぎないよう注意します。
芽の出やすさは品種によって異なるため、それぞれの品種ごとに注意して行います。
うちでは、催芽器と呼ばれる機械で催芽を行っています。
催芽器は水の温度を一定に保つ役割と、水をシャワー状にかけることで籾に酸素を送る役割を担っています。
播種
いよいよ、種まきです。
種まきの事を「播種」と呼んでいます。
種まきは播種機を使って行います。
ここでは、あらかじめ土を入れておいた育苗箱に籾をまいて、土をかぶせる作業を行います。
播種機の仕組みは至って簡単、
2mくらいのベルトレールに、土を入れる受けと籾を入れる受けがそれぞれ設置されています。
横にはハンドルが付いており、手でハンドルを回すと、ベルトが動きます。
と同時に2つの受けから土と籾が落ちてくる仕組みです。
一人が育苗箱を播種機に載せ、一人がハンドルを回し、一人が土と籾の補充をします。
そして、籾と土がまかれた育苗箱を播種機から取り、積み重ねる作業に二人が従事します。
これを5人でテンポよく行います。
この作業を、我が家では時期を変えて2回を行います。
それぞれ240箱、合わせて480箱ほど作ります。
播種作業でのポイントは、一箱の播種量です。
多くまく「厚まき」と少なくまく「薄まき」を比べてみると、
厚まきでは、苗どうしの養分や光などの奪い合いが激しくなり、苗が充実しません。
しかし、薄まきにしすぎると根の絡み合いが悪くなり、田植え機での田植えで支障が出てしまいます。
育苗
苗半作。
昔からそう言われているくらい苗作りはとても大事な作業です。